スーパー内を自動走行する「スマートカート」を開発した高校生にインタビューしました

芝浦工業大学附属高等学校1年のMさん、Hさん、Kさんは、2025年、中学3年生の時にスーパー内を自動走行する「スマートカート」の開発を行い、ビジネスコンテスト、ロボットコンテストなどで数々の賞を受賞しました。どのようにアイデアが生まれたのか、完成までにはどんな苦労があったのか、現在高校1年になった3人にお話を伺いました。

SBMC(芝浦ビジネスモデルコンペティション)ファイナルステージ 実機を使ったプレゼンテーションの様子

「スーパーを変えたい」より先に「自動走行をやってみたい」があった

今回3人が開発した「スマートカート」は、利用者を売り場へ自動で案内する“自律走行型ショッピングカート”です。買い物客は、事前にスマートフォンのアプリで買いたいものを入力。スーパーマーケット(以下スーパー)に行くとカートが最適なルートを計算し、登録した商品の売り場まで案内してくれます。さらに、買い物中にはAIが栄養バランスを考えた商品提案も行います。例えば、カップラーメンだけを買おうとしている人に、「こちらのサラダもどうですか?」と提案を表示することで、健康的な食生活もサポートする仕組みです。

このカートを使うことで、ユーザーは効率よく買い物をすることができますし、店舗にとっては売り場で案内する人が不要になるので、人手不足を解消することができます。さらに、利用者がタッチパネルでアンケートを入力できる仕組みも搭載。店舗側は、POS情報(レジで取得する情報)だけでは分からない、より詳細な利用者データを得られるといいます。

一見すると、「社会課題を解決するためのアイデア」から生まれたようにも見えるこのプロジェクトですが、実はスタート地点は少し違っていました。「最初は、“自動走行をやってみたい”っていうところから始まったんです」そう話してくれたのはMさん。もともとは、ロボット系の学会に向けて作品を作ろうとしていた3人。まず「自動で動くものを作ろう」という方向性が決まり、そこから、「どこで使うと価値があるだろう?」という発想へ広がっていったそうです。

当初は、文化祭で校内を案内するロボットを考えていたそうです。

「パンフレットだけだと、“どこで何をやっているか分かりにくいよね”って話していて。(Hさん)」

しかし、文化祭は混雑しやすく、廊下も狭いため、自動走行そのものが難しいと判断。他に人が迷いやすい場所を探して、たどり着いたのがスーパーでした。

これまでにない、かつ、実現できるサービスを考える

アイデアの背景には、3人自身の日常体験がありました。普段からスーパーで買い物をする中で、「どこに何があるか分からない」と感じることがあったそうです。ちょうどその時期、学校の海外研修でアメリカへ行き現地のスーパーを訪れた際、「何がどこにあるのか、本当に分からなかった(Kさん)」という経験をしたといいます。現在のネットスーパーや買い物代行サービスだと自分で商品を選べないため、“実際にスーパーに行き、効率よく買い物をする”ことを可能にするスマートカートを形にすることにしたそうです。

また、もうひとつ3人がこだわったのは、プランで終わらせず、実装すること。どんなに素晴らしいアイデアでも、実現できなければ意味がない――それが3人の共通した思いでした。そのために、実物大のスマートカートをつくって動かすことにこだわりました。

スマートカートには、本格的なロボット技術が使われています。自動走行部分では、「ROS(Robot Operating System)」というロボットを動かすためのソフトウェア基盤を活用。ROSは、世界中のロボット開発者が使っている仕組みで、センサーやモーターなどを連携させながらロボットを制御できるシステムです。3人は、障害物を検知するセンサーやモーターを組み合わせながら、実際に動くカートを制作していきました。

「ここまで本格的なアプリとロボットをつくるのは初めてだったので、すべてのプロセスが大変でしたが、特に大変だったのは、実際にロボットを動かすところですね。PCと台車をつなげるだけで丸1日かかったこともありました。そのほかも、試行錯誤を繰り返しました(Mさん)」

ソフトウェアだけではなく、“現実のものを動かす難しさ”とも向き合っていたことが伝わってきます。

生成AIはものづくりのハードルを下げてくれた

今回の開発では、生成AIも活用されました。使ったのはGoogleの「Gemini」です。「一気に全部作ろうとするとうまくいかないので、機能を分解して、少しずつつくっていきました(Hさん)」まず買い物アプリを作る。次に、ロボットへ情報を送る仕組みを作る。そのあと、自動走行とつなげる。そんなふうに、少しずつ段階を分けながら開発を進めていったそうです。

「Geminiが出してきたコードを実行してみて、エラーコードが帰ってきたらそれをGeminiに返して、改良を重ねていきました。もともとアプリなどを作っていましたが、ここまでのものは初めてだったので、Geminiとのやり取りを重ねながら学んでいきました。また、僕たちのプランを実現させるにはどんな部品やソフトウェアが必要なのかについても、Geminiに聞きながらすすめていきました(Mさん)」

「僕はプログラミングをあまりしたことがなかったので、AIがプログラミングのハードルを下げてくれたと感じています(Kさん)」開発期間は、発案からおよそ2か月。放課後に、それぞれの家で作業しながら、LINE通話で相談。時には誰かの家に集まり、開発を進めていきました。そのがんばりは、中高の先生方も高く評価しています。

「ものづくりはAIにとって代わられるとも聞きますが、今の段階では人間主導だと思っていて、人間主導であることは変わらないし、30年経ったとしてもAIが人間にヒットするものをつくれるとは思えないので、それがものづくりの楽しさだと思っています(Mさん)」

技術とビジネスモデルの両面が評価される

スマートカートは
・2025年10月SBMC(芝浦ビジネスモデルコンペティション)奨励賞、ジュニアイノベーター賞
・2025年12月RT(ロボットテクノロジー)ミドルウェアコンテスト日本ロボット工業会賞、ロボットサービスイニシアチブ賞、ベストサポート賞
・2025年12月「中高生がやってみたアントレプレナーシッププログラム成果報告会」優秀賞
を受賞。技術とビジネスモデルの両面が高く評価されました。今後はどのような展開になるのでしょうか。

「スマートカートプロジェクトは、MとKの2人で続けていきます。機能を増やしたり、市場調査を入れて進化させていきたいです。実店舗に実装できたら素敵だと思います(Mさん)」

「僕はものづくりより経営戦略、どうやってものを売るかを考えていきたいし、そういう活動をみんなにも面白いと思ってもらいたいんです。今つくっているプロダクトがあって、その中でスマートカートプロジェクトで学んだ過程、思考のプロセスが使えると思ってます(Hさん)」

これからの展開、そして3人の活躍が本当に楽しみです。